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為替の荒波を乗り越えろ!「外貨建取引に係る会計と税務」超解説

近年、事業活動のグローバル化や為替変動が大きくなることによって、為替変動が企業損益に与える影響も大きくなってきています。

日々の外貨建取引を適切に記帳したうえで、決算及び税務申告を進めることが、事業活動における為替変動の影響度を理解するためにも役立ちます。

また、追徴課税や会計上の訂正を回避するためにも重要となります。 

本記事では、外貨建取引に係る会計と税務について解説していきます。

目次

外貨建取引とは 

 外貨建取引とは、売買価格等の取引価額が外国通貨で表示されている取引をいいます。例えばドル建てで取引価格が定められている商品を仕入れた場合は外貨建取引に該当します。 

 外貨建取引には以下の取引が含まれます。 

・取引価額が外国通貨である商品やサービスの売却や購入 

・決済金額が外国通貨である借入れや貸付け 

・券面額が外国通貨である社債の発行 

・外国通貨による前渡金や仮払金の支払い、前受金や仮受金の受取り 

・決済金額が外国通貨であるデリバティブ取引 

外貨建取引の会計処理 

取引発生時の会計処理 

 外貨建取引の発生時の会計処理は、取引発生時の為替相場で円貨に換算し記帳することとなります。

ここで取引発生時の為替相場とは、「取引が発生した日における直物為替相場」又は「合理的な基礎に基づいて算定された平均相場」、例えば、取引月や取引週など一定期間の直物為替相場の平均、が原則となります。

容認処理として、取引が発生した日の直近の一定の日における直物為替相場とすることも認められています。いずれにしても会社の会計方針に従って継続的な処理が必要となります。

また、外貨建取引の状況から勘案して、取引を外国通貨で記録することが合理的であると認められる場合には、当該外貨建取引を外国通貨で記録し、月末等の一定の時点で、当該時点の直物為替相場等により円貨換算することも認められています。 

 外貨建て(ドル建て)にて100ドルの商品を売り上げた場合の仕訳は以下となります。

取引発生時の直物為替レート120円/ドル

借方勘定科目 借方金額 借方勘定科目 借方金額 
売掛金 100×120 円 売上 100×120 円 

決算時の会計処理 

 決算時には、売掛金や買掛金などの外貨建金銭債権債務は決算時の直物為替相場で換算し、簿価との差額は為替差損益として計上します。

外貨建ての前渡金や前受金は、外貨建金銭債権債務ではありませんので、決算時の評価替えはせず、取引時(金銭授受時)の為替相場で据え置くこととなります。

前渡金や前受金は取引価額の全部又は一部を外貨で事前に支払い又は受け取っているものであり、それらから為替変動による損益は発生しないためと考えることができます。

決算時の直物為替相場としては、決算日の直物為替相場のほか、決算日の前後一定期間の直物為替相場の平均を用いることができます。 

 主な換算対象の換算レートと換算差額の処理方法は以下の通りです。 

・外国通貨:決算時の直物為替相場で換算し、差額は為替差損益 

・外貨建金銭債権債務:決算時の直物為替相場で換算し、差額は為替差損益 

・外貨建未収収益、未払費用:決算時の直物為替相場で計上 

・外貨建前渡金、前受金:金銭授受時の為替相場で換算 

・売買目的有価証券:決算時の直物為替相場で換算し、差額は有価証券評価損益 

・満期保有目的の債券:決算時の直物為替相場で換算し、差額は為替差損益 

・子会社株式、関連会社株式:取得時の為替相場で換算 

・その他有価証券:決算時の直物為替相場で換算し、差額はその他有価証券評価差額金 

※その他有価証券に属する債権については為替変動による差額部分を為替差損益として処理することができる 

・デリバティブ取引等:決算時の直物為替相場で換算し、差額はデリバティブ取引等の評価損益 

 6月30日に売り上げた商品100ドルが期末(12月末)時点で未入金である場合の仕訳は以下となります。

6月30日の直物為替レート120円/ドル、12月末の直物為替レート150円/ドル
売上時には取引発生時の為替相場にて記帳済みの前提

借方勘定科目 借方金額 借方勘定科目 借方金額 
売掛金 100×(150-120)円 為替差損益 100×(150-120)円 

ヘッジ取引について 

 ビジネス上、為替変動リスクが損益に与える影響が大きい企業では、当該リスクをヘッジする目的で、ヘッジ取引が行われていることも多いと思います。

為替変動リスクに対応するためのヘッジ取引の例としては、為替予約により受取り円価額ないしは支払い円価額を確定させることや、為替オプションといった金融商品を利用することが挙げられます。 

 為替予約や為替オプションはファイナンシャルヘッジと呼ばれていますが、これらのヘッジ方法は一般的に数か月から半年程度の期間の為替変動リスクに対応するものであり、昨今の為替変動のように大きな為替変動が長期間続くような場合には、為替変動リスクに十分対応できないことも想定されます。

長期にわたる為替変動リスクに対応するためには、会社全体又はグループ全体での外貨の受取り及び支払いのポジションをネットするいわゆるオペレーショナルヘッジによる対応等も検討する必要があります。 

ヘッジ会計の適用(容認処理) 

 為替変動リスクに対応する目的でヘッジ取引を行ったものの、ヘッジ対象とヘッジ取引それぞれで会計上の損益計上時期が異なる場合があり得ます。

そういった場合、両者の損益を同一の会計期間に認識することで、ヘッジの効果をより適時に会計に反映させることができ、決算書の利用者にとっても有用となります。

そのため一定の要件のもと、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ取引にかかる損益を同一の会計期間に認識するヘッジ会計を適用することができます。 

決済時の会計処理 

 取引の決済時には、外貨の受け取り金額又は支払い金額を決済時の直物為替相場で円貨換算し、決済される外貨建金銭債権債務の帳簿価額との差額を為替差損益として計上します。 

 帳簿価額15,000円で計上されている外貨建売掛金100ドルが決済された際の仕訳は以下となります。

決済時の直物為替相場140円/ドル

借方勘定科目 借方金額 借方勘定科目 借方金額 
現預金 100×140 円 売掛金 15,000円 
為替差損益 1,000円(差額)   

外貨建取引の税務調整 

外貨建取引にかかる所得税の計算 

 居住者が行った外貨建取引については、当該取引日における電信売買相場の仲値で円換算した金額で各種所得の金額を計算します。

また、売上の対価等として受け取った外国通貨を、同一の金融機関に同一の外国通貨で引き続き預金として預け入れている場合について、当該預金に係る為替差損益を所得として認識する必要はありません。 

外貨建取引にかかる法人税の計算 

 法人税計算においては、外貨建取引で発生した外貨建資産負債について、税務上の簿価と会計簿価との差額を税務調整することとなります。

例えば、短期の外貨建債権債務や短期の外貨預金については、期末時の電信売買相場の仲値により円貨換算した金額が期末の税務簿価となるため、それらについて会計簿価と差異がある場合には、法人税申告書上で税務調整を行うこととなります。 

 また、法人がヘッジ取引を行っている場合における税務も会計基準と整合するような形で定められていますが(法人税法61条の6など)、会計上の要件を満たせば必ず税務上の要件も満たすということにはならないため注意が必要です。 

 外貨建売掛金100ドルが、決算書上14,000円で計上されていた場合の税務調整は以下の通りです。 

期末の電信売買相場の仲値150円/ドル、外貨建売掛金は翌期中に決済予定の短期金銭債権と仮定

別表四 為替差損益 1,000円 加算 
別表五(一) 売掛金 1,000円 

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