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定期返済の無い融資のカタチ。短期継続融資の有効活用術

資金は会社にとっての血液と例えられるように、その流れが止まれば会社は倒産してしまいます。そのため、資金繰りにより収支の適切なバランスを取る必要があります。

とりわけ、企業として資金調達の手段を確保することは、緊急時にも資金繰りを安定させるうえで不可欠になってきます。

今回は有効に活用したい融資の形式を取り上げたいと思います。

目次

一般的な融資の形式とその現状

現在最も一般的な融資の形式は証書貸付という方法になります。金銭消費貸借契約書という借用証書を交わすことで、その書面に記載された借入金額、返済期限、金利といった諸条件に基づいて融資が行われます。

そしてこの証書貸付では殆どの場合、毎月の定期返済をしていく事になります。多くの会社にとっては、お金を借りたら毎月の返済が始まる事は当然であり、それが融資の仕組みであるという認識だと思います。

一方で、毎月の返済があるが故に、せっかく融資を受けても期待したほど収支バランスが改善されず、結果的に返済のために更に融資を重ねるという悪循環に陥ってしまうケースも見受けられます。

経常的な運転資金に使いたい短期継続融資

収支のバランスが悪く毎月の資金が不足したり、業況の変化によって既存の借入の返済負担が重荷になる事は決して珍しくありません。所謂、運転資金が不足している状況ですが、そのような場合に定期返済付きの短期融資を受けても、その返済のための支出が新たに増えるため、借り入れの効果は減殺されてしまいます。

そこで運転資金を充足したい場合には、定期返済の無い融資の活用を検討したいところです。期限が到来したら一括で返済する融資で、短期継続融資として資金の供給を受けることになります。

融資の概要

短期継続融資は短期転がし(短コロ)とも呼ばれ、期日に一括で返済する形式の融資を受け、期日が到来したら同様の形式の融資を再び受けるという書き換え手続きを繰返す融資の方法です。

これにより実質的に利息負担のみで継続して借り続けることができます。長期の資本拠出を受けたのに似た状態になっているとも言えます。

証書貸付でこのような方法を採るケースもありますが、返済期日が書かれた手形を担保に融資を受ける手形貸付という形式が多く使われます。これは更新の手続きが簡略化できる事と、印紙代が安いという利点からです。

メリット

短期継続融資のメリットは定期的な返済を必要としない点です。毎月の返済によって目減りしないので、必要なタイミングで必要な金額を使えるという点で融資の効果を最大限享受できるといえます。

デメリット

業況によっては更新を断られるケースや更新時に利率が上昇する可能性があります。また、元本が減らないため利息負担は定期返済付き融資よりも大きくなります。

金融機関の動向

実は、短期継続融資という融資の形式は昔から存在していました。以前は多く使われていましたが、金融庁が不良債権化の懸念がある貸出を精査する方針を打ち出した結果、短期継続融資の更新を断られるケースが相次ぎました。貸しはがしと呼ばれるものです。リスクを恐れた金融機関が保証と担保付きの長期融資への転換を進めた結果、今日では証書貸付が主流になったという経緯があります。

現在、そのような方針は撤廃され、正常な運転資金に対して短期継続融資で対応する金融機関も出てきています。資金需要に柔軟な形で応じ、更新の際には会社の業況や実態の適切な把握により継続の可否を判断するという運用がされています。

しかし、当然ながら金融機関の足並みが揃っているわけではありません。

そもそも短期継続融資の引き受けは行わない場合や、引き受けは行っても、会社のリスクによっては経営者保証や担保を求められるケースも存在しています。

融資を受けるにあたっての注意点

短期継続融資は定期返済がなく、金融機関側としては貸し出し続けている状態であるため、リスクの高い融資という位置付けになります。従って融資を受ける審査は厳しくなる傾向にあり、同じ期間での定期返済付き融資と比較すると利率も高くなる事が多いようです。

あくまでも、十分な収益力が担保されているという前提の元に、正常な運転資金の範囲内で将来的に改善が見込める資金繰りの支援や事業の強化を後押しする目的で行われるものであると認識しましょう。

また、銀行選びも重要になってきます。前述の通り短期継続融資に対して消極的な金融機関があることも事実です。現状では先方から提案される事は少ないですので、こちらから要望として伝えて反応を窺うと良いかもしれません。

取引行がどのような融資姿勢か把握するためにも、日頃から担当の方とのコミュニケーションをしっかり取ることが重要です。

定期返済との使い分け

定期返済のある融資ばかりでは資金繰りを圧迫する事になりますし、反対に短期継続融資ばかりではいつまでも元本が減らず金利負担も大きくなります。

それぞれの融資の形式を使い分けていく事が大切になります。

定期返済のある融資は設備投資での活用に適しています。高額な初期費用を借入で賄い、設備の稼働により生み出される収益で毎月返済していくという形になります。設備の生産能力(収益力)が返済額を上回っており、返済期間が耐用年数と合致していれば資金繰りを圧迫せずに設備導入が可能になります。

短期継続融資は運転資金の調達に適しています。年間を通してみれば収支のバランスが取れていても、売上に季節変動がある場合や請負工事のような完成時に大きな収入がある業態だと、固定費の支出の負担が大きくなるタイミングが出てきます。このような場合に、都度借入をすると印紙代や手続の手間が大きくなるため、短期継続融資を積極活用したいところです。

また、しっかりとした収益計画があれば、新たな運転資金の借入にあたり、月々の返済を増やしたくない意向を伝えて交渉することもできます。

フローと返済額のバランスが釣り合っていない会社が、既存の長期借入を短期継続融資への借り換えを行い、毎月の返済額をキャッシュフローの範囲内に抑えたことで資金繰りが劇的に改善した例もあり、幅広い活用が可能です。

まとめ

今回取り上げた定期返済の無い融資の形式は、会社の経営を安定させる切り札ともなり得るので、是非活用していただきたいです。

短期継続融資は思い付きですぐに叶うものではないため、まずは提案ができる、又は引き受けをしてもらえる銀行と取引をする事がスタートとなります。

そして会社側が返済の根拠となる情報をタイムリーに提供する姿勢が重要になってきます。

融資には様々な方法があり、仕組みを知っておくことは重要です。加えて、状況に応じて賢く使い分けていくことで会社の資金調達力を高めていきましょう。

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