人的コストを削減しながら、適切な経理業務を行えるようになる経理/記帳代行サービス。外注先には、経理/記帳代行サービスと税理士事務所があります。外注する際は依頼料が発生するため、依頼元の企業は外注で得られるメリットと費用のバランスを考えなくてはいけません。
そこで今回は、経理/記帳代行サービスを利用する意義について解説したうえで、税理士事務所と記帳代行サービスの違い、利用メリットについて解説します。「税理士事務所へ依頼した方がよいパターン」「記帳代行サービスへ依頼した方がよいパターン」の両者も紹介しますので、ぜひご覧ください。
経理/記帳代行サービスを利用する意義
経理/記帳代行サービスとは、企業の経理業務や記帳業務を引き受けてくれる外部の代行業者です。主に売掛金や買掛金の管理、給与計算、年末調整といった「経理業務」と会計ソフトへの入力や会計帳簿の作成などの「記帳業務」を代行してくれます。
経理/記帳代行サービスを利用する意義は、経理業務で発生する企業の負担を軽減しながら、経理業務を完遂できることです。経理業務に特化した人材が経理業務を代行してくれるため、人為的ミスの少ない成果物を期待できます。経理業務が自社の負担になっているのなら、代行によって空いた時間を、より重要な業務に投下できるでしょう。
代行サービスを利用することで、新たに経理の職員を採用するコストや育成するコストを削減できます。1人の経理職員に経理業務を任せていた場合、その職員が退職する際に人手が足りなくなったり引継ぎがうまくいかないといったケースが起こる可能性がありますが、外注によってそうしたリスクを軽減できるのです。
税理士事務所と経理/記帳代行サービスの違い
税理士事務所には、税務申告に関する相談や代行を依頼できますが、代行サービス業者にはできません。税理士法により、税務書類の作成や税務相談は税理士が行う独占業務と定められているからです。
依頼できる仕訳数にも違いがあります。仕訳(しわけ)とは、事業者の取引を帳簿に記載する作業のこと。請求書1枚=1仕訳、領収書1枚=1仕訳のように計算されるものです。
税理士事務所の場合、月間100ほどの仕訳数から依頼を受けているケースがあります。一方、記帳代行サービスの場合は、月間30仕訳数と、比較的少ない件数から依頼を受けているケースが存在します。開業して間もない企業や取引件数の少ない企業は、記帳代行サービスの方が依頼しやすいでしょう。
税理士事務所に依頼するメリット
税理士事務所に依頼する場合、依頼元の企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的なメリットを2つ解説します。
税務申告までトータルで依頼できる
くり返しになりますが、税務申告に関する相談や代行は税理士だけが行える独占業務です。税理士事務所に依頼することで、経理業務から税務申告の代行までトータルで依頼できます。
税務申告は、決算月から2ヶ月以内に申告および納税する企業の義務です。期間厳守で行う必要があるほか、申告漏れや記入ミスなどのない正確な書類作成も求められます。税のプロである税理士に依頼すれば、そうした企業の義務をしっかりと果たせるはずです。
税の専門家に税務関連の相談ができる
税理士には税務関連の相談ができます。税に関する悩みや困りごとを相談できるほか、税制改正にも正確な対応ができるでしょう。
税制改正とは、国や地方の財政状況などの社会の変化に対応して、政府が税制度を見直すこと。会計や税に関する専門知識のある人材が自社にいない場合、税制改正に対応するのは大変な作業となります。
その点、税理士は法律の条文などの難解な内容を解釈したうえで適切に対応してくれるため、記入ミスのない会計帳簿を作成してくれるのです。また、基本的には専任の担当者が対応してくれるので、自社の取引内容を熟知していることから税制改正に対応した税務に関する助言を受けられることも期待できます。
経理/記帳代行サービスに依頼するメリット
経理/記帳代行サービスを利用する2つのメリットをみていきましょう。
企業の経理業務を任せられる
経理/記帳代行サービスには、企業が抱えている経理業務のほとんどを依頼できます。もしも経理職員の急な休みや退職といった予期せぬ事態が起きても、安心して経理業務を任せられるでしょう。また、経営者が経理業務も担当している場合は、代行サービスの利用によって空いた時間を経営の改善に投下できます。
経理/記帳代行サービスが対応してくれる主な業務範囲がこちらです。
サービスの種 | 概要 | 主な業務範囲 |
---|---|---|
経理代行サービス | 記帳を含めた経理業務全般の代行 | 記帳業務 請求業務 振込業務 買掛金・売掛金の管理 給与計算 年末調整 |
記帳代行サービス | 経理業務に含まれる記帳業務の代行 | 会計ソフトへの入力(仕訳の入力) 帳簿の作成 |
適切な依頼コストを設定できる
適切な依頼コストを設定できる点も、経理/記帳代行サービスを利用するメリットです。先ほど、依頼する仕訳数が少なくても、経理/記帳代行サービスを利用できると述べましたが、記帳業務だけを外注依頼することも可能です。
記帳業務とは、主に会計ソフトへの入力業務や帳簿作成を意味します。経理業務に比べて高い専門性は必要ありませんが、記帳業務が全体を圧迫するケースもあります。そんなときは、記帳代行サービスの利用によってコア業務にかける時間を増やせるのです。依頼する業務範囲を狭めることで、コストの削減も実現できます。
税理士事務所と経理/記帳代行サービス、どちらを利用すべき?
それでは、税理士事務所と経理/記帳代行サービスのどちらを利用すべきでしょうか。ここまでお読みいただいて、どちらがよいか見当がついた方もいらっしゃるかと思いますが、ここからは、パターン別におすすめの依頼先を紹介します。
税理士事務所に依頼した方がよいパターン
税理士事務所に依頼した方がいいパターンはこちらです。
- 税務申告の書類作成や申告を代行してもらいたい場合
- 税務関連で悩みや困りごとがある場合
- 税制改正などの変化に自社だけで対応するのがむずかしい場合
税理士に依頼することで、経理業務に関する悩みから税に関する相談まで、幅広く対応してもらえます。なお、税理士資格を持たない業者に税務処理を任せると、税理士法違反となります。依頼を引き受けた非税理士には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるおそれがあるのでご注意ください。
参考:国税庁 税理士法違反行為
経理/記帳代行サービスに依頼した方がよいパターン
記帳代行サービスに依頼した方がよいパターンは、依頼コストを安く抑えたい場合になります。経理記帳代行サービスは、税理士事務所よりも依頼を受ける最低仕訳数が低めに設定されている場合が多いのです。
また、「会計ソフトへの入力や帳簿作成などの日常的な経理業務を任せたい」「コアな経理業務に携わる人手は間に合っている」という場合も、経理/記帳代行サービスへの依頼がおすすめです。自社である程度の経理業務を負担できる企業や取引先数がまだ少ない場合は、経理/記帳代行サービスに依頼する方がコストを抑えられる可能性があります。
経理/記帳業務の外注で失敗しないコツ
経理/記帳業務の外注で失敗しないためには、依頼したい経理業務を明確にしたうえで、複数の依頼先を検討することが重要です。具体的な内容をみていきましょう。
依頼したい経理業務を明確にする
依頼したい経理業務を明確にすることで、外注先とのミスマッチを防止できます。例えば、税務申告の代行や相談を希望するのならば、税理士事務所へ依頼しなければいけません。経理業務に課題を抱えているのなら、記帳代行サービスではなく経理/記帳代行サービスに依頼する必要があります。
経理業務の代行サービスの中には記帳業務も含まれるため、「記帳業務のできる人材が揃っていて経理業務に関わる人材が不足している場合」は、経理業務全般をまとめて依頼する方が効果的です。依頼する前に、自社の経理業務の流れを再確認していただき問題点をピックアップしましょう。
複数の依頼先を比較検討する
経理/記帳業務を外注する際は、自社の内部情報を依頼先に渡すことになります。売上や資産状況といった経営に関わる情報のほか、従業員の給与や賞与といった機密情報も含まれるでしょう。情報漏洩のリスクを軽減するためにも、信頼のできる依頼先を見つける必要があるのです。
以下の項目を参考にして、自社に合った依頼先を探してみましょう。
- 導入実績が豊富である(依頼数を公表している)
- 上場企業である
- 機密情報の取扱いについて説明できるなど、セキュリティ意識が高い
- 依頼元とのコミュニケーション手段(電話、メール、チャットツールなど)が豊富
- 提供しているサービス範囲が明確である
まとめ
経理/記帳業務を外注することで、企業の負担を軽減しながら経理業務を完遂できるようになります。経理業務を請け負ってくれる業者には、税理士事務所と経理/記帳代行サービスの2種類が存在するため、自社の業務フローを見直していただき、依頼したい経理業務を明確にしましょう。
依頼したい業務範囲を決めたうえで、複数の候補から自社に合った依頼先を選定すれば、代行サービスの費用対効果を最大限に高められるはずです。本記事を参考にしていただき、自社に適切な経理/記帳代行サービスを利用してください。