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中小企業・小規模事業者が人手不足を解消する具体策とは?~事例も紹介~

中小企業や小規模事業者が直面する経営課題の1つに、人手不足が挙げられます。人手不足は生産性低下の大きな原因となるため、できるだけ早く解消しなくてはなりません。

では、中小企業や小規模事業者はどのような具体策をとるべきなのでしょうか。この記事では、人手不足解消に役立つ6つの具体策を解説します。中小企業庁の公式Webサイトを参考に、人手不足を解消した事例も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

中小企業・小規模事業者が直面する人手不足の現状

2023年9月、地域総合経済団体である日本商工会議所と東京商工会議所は、「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」の調査結果を公表しました。

この調査は、中小企業における人手不足の状況と対策などの調査を目的として実施されたものです。調査地域、調査対象、回答企業数は以下の通りです。

  • 調査地域:全国47都道府県
  • 調査対象:中小企業 6,013社
  • 回答企業数:3,120社(回答率 51.9%)

調査結果によると、人手不足の状況と対策について、「人手が不足している」と回答した企業が全体の68%にのぼりました。

さらに、「人手が不足している」という回答のうち、「非常に深刻」と「深刻」を合算した割合は64.1%と、こちらも高い数値を示していました。

引用:日本商工会議所・東京商工会議所|「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」調査結果 1.人手不足の状況と対策

ここでいう「非常に深刻」とは、人手不足を理由とした廃業など、今後の事業継続に不安がある状態を指しています。一方の「深刻」とは、事業運営に支障がある状態のことです。

調査結果について、業種別に確認してみましょう。

「人手が不足している」との回答割合は、全ての業種で5割を超える数値となりました。特に介護・看護業や建設業では、人手が不足しているとの回答が8割を超える高い数値となっていました。

「人手が不足している」と回答した上位5業種

業種不足していると回答した割合(%)
介護・看護業86.0
建設業82.3
宿泊・飲食業79.4
情報通信・情報サービス業77.7
運輸業77.1

参考:日本商工会議所・東京商工会議所|「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」調査結果

中小企業・小規模事業者の人手不足で懸念される悪影響

中小企業・小規模事業者の人手不足によって懸念される悪影響がこちらです。

  • 従業員の負担増加による離職率の上昇
  • 人材育成機会の損失
  • 従業員同士のコミュニケーション不全

従業員の負担増加による離職率の上昇

現場の人手不足は、従業員の長時間労働や休暇取得数の減少などにつながります。

人手不足とは、企業活動を継続する上で、必要な従業員が足りていない状況のことです。人手不足が進行すると、自社の商品・サービスに需要があっても「供給ができない」あるいは「十分な供給がむずかしい」という状態に陥ってしまいます。

人手不足の状態が続けば、従業員ひとりあたりの負担量増加につながります。従業員への負担が増加すれば、離職率の上昇につながりかねません。

人材育成機会の損失

従業員の離職は、育成機会の損失を招くおそれがあります。企業側にとって、従業員を育成する機会を失ってしまうのです。

特に、未経験者や新入職員が退職した場合、企業への損失は大きくなります。なぜなら、雇用するまでに発生したコストを回収する前に退職してしまうからです。

従業員同士のコミュニケーション不全

人手不足が、従業員同士のコミュニケーションに悪影響をおよぼすおそれもあります。従業員の負担が増加すると、他者への関心や仕事への意欲が低下する可能性があるからです。

その結果、従業員同士のコミュニケーションの機会が少なくなったり必要最低限のコミュニケーションだけ行われたりして、現場の士気低下につながります。

中小企業・小規模事業者が人手不足を解消するための具体策

では、人手不足を解消するためには、どのような具体策が有効なのでしょうか。中小企業・小規模事業者におすすめの対策を6つ解説します。

募集要項や採用基準の見直し

求職者の応募が少ない場合や「求める人材がなかなか来ない」という場合は、募集要項や採用基準の見直しが効果的です。

募集要項の見直しによって応募数の増加を期待できます。また、採用基準の見直しによって、企業側と求職者のミスマッチを防げます。

募集要項を見直す際は、業務内容、給与、勤務時間などの労働条件を明確に記載して、求職者が判断しやすいように配慮しましょう。労働条件を明確にすると、自社の魅力が求職者に届きやすくなります。

一方、求職者とのミスマッチが起きている場合は、自社が求める人物像を明確にしましょう。人物像を明確にすることで、「この会社は、私のような人を求めているかもしれない」と、求職者からの応募数増加を期待できます。

経営理念や基本方針の発信

自社が求める人物像を示す方法として、経営理念や基本方針の発信が有効です。

経営理念とは、企業活動の基本方針となる考えや信念を文章にあらわしたもの。「何のために企業が活動するのか」「どのような方向性を示すのか」といった企業の根本となる活動方針を示すものです。

経営理念や基本方針に共感してくれる方が応募してくれれば、ミスマッチが起きる確率を下げられるでしょう。

また、経営理念を自社の従業員に浸透させる施策も、人手不足解消に重要です。

経営理念を浸透させると、従業員が持つエンゲージメント(思い入れ、誇り、愛着)が向上しやすくなります。エンゲージメントの向上は、離職率の低下や生産性の向上といったプラスの効果をもたらしてくれるのです。

評価制度の導入やキャリアパスの提示

評価制度の導入やキャリアパスの提示は、従業員のモチベーションを高めるための有効策です。

評価制度とは、従業員の長所や短所、所属部署における貢献度などを評価する制度のことです。評価制度を導入することで、従業員の適正に合わせた部署への配属も可能となります。

一方のキャリアパスの提示とは、キャリア(地位・役職)を獲得するまでのガイドラインを示す施策です。キャリアパスを提示すると、従業員は、特定の役職に就くためにクリアすべき項目が具体的にわかるようになるため、モチベーションアップにつながります。

公平かつ納得感のある評価制度やキャリアパスによって、従業員のモチベーションを上手に管理しましょう。

従業員のコミュニケーションの促進

従業員同士が現場以外でコミュニケーションできる場を設けたり、悩みや苦労を共有できる仕組みを作ったりすることも、人手不足解消に役立つ施策です。

従業員同士のコミュニケーションを促進させることで、人間関係のトラブルを防げるでしょう。

また、企業トップや上層部の方々が率先して従業員とコミュニケーションをとり、悩みを抱えた職員を見つけ出す方法も効果的です。

同僚や直属の上司との人間関係の悩みは、立場が近い人に打ち明けにくいもの。より立場が上の人からコミュニケーションをとることで、悩んでいる人を早く見つけられるでしょう。

職場環境の改善

職場環境とは、温度、湿度、照明、音といった従業員を取り巻く環境全般を指します。

こうした職場環境を改善すると、従業員が働きやすくなります。コミュニケーションの増加、業務の負担軽減、業務への集中力アップなどにつながるでしょう。

職場環境の改善は、従業員の満足度を高め定着率のアップにも効果的です。従業員からの高い評価は企業イメージ向上につながるため、リクルート活動を優位に展開できます。

ICTやアウトソーシングサービスの導入

人手不足解消のためには、ICT(Information and Communication Technology)の導入もおすすめの施策です。ICTを現場に導入・運用することをICT化と呼びます。従業員同士の情報共有を効率化したり、テレワークを含む多様な働き方を推進したりできます。

ICT化の具体例がこちらです。

  • 社内専用のチャットツールの導入
  • クラウドシステムの活用
  • 業界専用ソフトウェアの運用

また、採用活動が思うように進まない場合は、アウトソーシングの導入も考えられます。アウトソーシングとは、業務の一部を外部の企業に委託することです。

アウトソーシングサービスを活用することで、従業員の負担を減らしながら質の高い企業活動を継続できるでしょう。

中小企業・小規模事業者が人手不足を解消した事例

中小企業や小規模事業者が人手不足を解消した事例を2つみていきましょう。ここでは、中小企業庁が公式Webサイトで公表している「中小企業・小規模事業者の人手不足への対応事例集」から、2社の事例を紹介します。

参考:中小企業庁|中小企業・小規模事業者の人手不足への対応事例集

株式会社昭建

株式会社昭建は、1932年に設立された建設業を営む企業です。

従業員の平均継続年数は19年と高い定着力が特徴。しかし、50歳代のベテラン職員の割合が高く、若手従業員の確保が課題でした。

そこで、合同企業説明会を活用して積極的に求職者へのアプローチを開始。そして興味を持った人を職場見学会に招きました。

職場見学会では、従業員が働いている現場や業務を見学してもらい、自分が昭建で実際に働くイメージを持ちやすいように工夫しました。その結果、6名の人材採用を実現できたのです。

株式会社池田

株式会社池田は、調剤薬局事業、農業支援事業、介護事業を手がける企業。新規事業の土台となる人的基盤の強化が課題でした。

株式会社池田が実行したのは、会社の理念や社是(しゃぜ)の意味、企業文化や歴史について、従業員に伝えること。経営者から幹部、幹部から現場へと伝えていくことで、理念などの浸透を図りました。

ほかにも中途採用者や新卒採用者への研修を充実させ、帰属意識や企業独自性の理解に現場も着手。経営者や幹部が一体となって、新規事業の土台強化に取り組んでいます。

まとめ

中小企業・小規模事業者の人手不足を解消するためには、新規採用者の増加と既存従業員の定着率向上が鍵を握ります。

自社の現状を確認していただき、適切な施策が何かぜひ検討してみてください。本記事が、人手不足解消の一助になれば幸いです。


■参考サイト

厚生労働省|人材確保のための雇用管理改善促進事業

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000203093.pdf

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