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コロナ融資(ゼロゼロ融資)の借換保証制度スタート。適用条件・借換タイミングを解説します。

街工場

新型コロナウイルスにより売上が減少した企業に対して行われた融資制度であるコロナ融資。2020年5月での民間金融機関の取り扱い開始からもうすぐ3年が経過し、返済開始が始まる企業の集中が想定されています。一方、足元では物価高騰や景気低迷など、中小企業を取り巻く環境は厳しいと想定されます。
この状況を受け、コロナ融資の猶予措置ともいえる借換保証制度がスタートしました。本記事では借換保証制度の概要や申請要件・方法など制度の全体観を解説します。

目次

コロナ融資(ゼロゼロ融資)の現状

今回借換の対象となるコロナ融資とは、新型コロナウイルスにより売上が減少した企業に対して行われた融資制度です。3年間は利子補給により実質無利子・更に無担保のためゼロゼロ融資とも呼ばれています。民間金融機関が取扱いを開始した2020年5月以降に融資件数が激増し、貸付額の累計は約42兆円に上ります。この際、元本の据置期間を利子補給の期限に合わせて3年とする企業が多かったため、3年が経過した2023年の5月以降に返済開始する企業が集中すると言われています。

コロナ融資は迅速な資金供給を最優先したため、通常時よりも簡易な手続きと審査で実行することができました。その弊害として倒産寸前の状態でも融資が受けられてしまったため、所謂ゾンビ化した企業が相当数存在すると指摘されています。返済開始後にはこれらが不良債権として顕在化し、大きな社会問題となるかもしれません。

コロナ借換保証制度概要

それではここからコロナ借換保証制度についての概要を説明します。

制度の概要

感染拡大の影響長期化や物価高騰により依然として経営環境は厳しい状況です。企業からは返済負担軽減の借換、新たな投資のための資金需要が高まっています。こうした動きを受けて、新たにコロナ借換保証制度が開始されました。 一定の要件を満たせば、コロナ融資以外の保証協会からの融資も借換えが可能であること、新たに資金調達が必要となる場合も利用できる点が特長です。

融資可能額(保証限度額)

1億円以内となっています。しかし、保証協会の無担保での保証枠は8,000万円のため、満額の融資を受けたい場合は原則担保の提供が必要となります。

融資の期間

保証期間は10年以内、据置期間は5年以内です。据置期間に関しては2年を提示されるケースが多く、長期間の設定には相応の理由と経営計画との整合性が求められます。

保証料

0.2%等(補助前0.85%)です。詳細は後述しますが補助を受けるにはセーフティネット4号又は5号の認定が必要になります。
※基本的な枠組みは全国で共通していますが、一部利率や保証料について都道府県毎に違いがあるケースがあるので、取引のある金融機関及び保証協会への確認が必要になります。

コロナ借換保証制度を受けるための要件

申請方法

借換保証制度を受けるには、コロナの影響により直近においても売上高等が減少している事が前提となります。具体的には、セーフティネットの認定取得または、売上高・利益率の減少要件のいずれかを満たしている必要があります。
自社または顧問先が該当するかどうかの判定基準としては下記①から④のいずれかに該当した上で、経営行動計画書を作成と金融機関による伴走支援を受けることが要件となっています。
尚、売上高又は利益率の減少要件にのみ該当する場合は、保証料の補助が適用されない点に注意しましょう。

要件①:セーフティネット4号に認定されていること

最近1か月間の売上高が前年同月と比較して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間(見込額)と合計した3か月間の売上高が前年同期と比較して20%以上減少となる場合に市区町村から認定されます。

要件②:セーフティネット5号に認定されていること

指定業種であり、最近3か月間の売上高が前年同期と比較して5%以上減少している場合に市区町村から認定されます。

要件③:売上高の減少

最近1か月間の売上高が前年同月と比較して5%以上減少している必要があります。

要件④:売上高総利益率または営業利益率の減少

最近1か月間の売上高総利益率、又は営業利益率が前年同月と比較して5%以上減少している必要があります。こちらは直近2年間の決算書との比較も認められています。

コロナ借換保証制度申請・手続き方法

大まかな流れとしては、企業側は金融機関に借換保証の相談・融資申込を行い、経営行動計画書を作成する事になります。金融機関は市町村にセーフティネット保証の認定申請を行い、結果を受けて保証協会への保証審査依頼と作成した経営行動計画書の提出を行います。承認が下りたら融資が実行され、金融機関からの伴走支援が行われます。 付き合いの深い金融機関からは、企業から相談を持ちかける前に借換保証の提案をされるケースも多いです。

経営行動計画書の作成

経営行動計画書は保証協会への交渉材料であり、その後の伴走支援の叩き台となります。企業主導で金融機関のサポートを受けながら作成していきます。5か年計画となっており、現状の認識と財務分析をの結果を踏まえて目標を設定します。
更にその目標達成までのアクションプランと、具体的な返済計画の記載が求められています。

金融機関の継続的な伴走支援

具体的には毎月の試算表の確認や状況の聞き取りによる経営行動計画書の進捗確認が伴走支援として行われます。コロナ借換融資は字の通り借換の機会になり得るため、金融機関による融資枠の取り合いが起きる側面があります。一方で、伴走支援には人員も時間もかかるため、全ての企業が融資を受けることは現実的に難しいと言えます。
伴走支援が可能、言い換えれば返済可能な資力・計画を持つ企業に対して融資を行う姿勢である事を認識する必要があります。

制度導入のメリット・デメリット

本制度は用途の柔軟性があり制度上の利点は多くありますが、最も大きなメリットは据置期間を延長できる点にあります。返済負担が軽減されることで経営の立て直しを図る時間的猶予を得ることができます。 今回は利子補給もなく、保証料など条件面ではコロナ融資に見劣りしますが、それでも借換制度の存在は多くの企業の助けとなります。

一方でデメリットもあります。従前のコロナ融資は「危機関連保証」という突発的な災害用の枠で行われていました。しかし今回のコロナ借換保証は「経営安定関連保証」という経営支障への対策枠に統合されての借換となります。実はこの枠はコロナ融資以外の融資で既に使われているケースがあります。その場合、元々「危機関連保証」枠で受けていたコロナ融資の借換をすると、「経営安定関連保証」の枠をオーバーしてしまう結果となるため承認されないという事態になります。
また、関連会社や子会社はコロナ融資の際は保証枠も別として見られていたものが、今回の借換制度ではグループ全体で1つの保証枠として見られる場合がある点にも注意が必要です。

スピードを優先していたコロナ融資とは異なり、新たな融資に対して慎重な姿勢を取る傾向にあります。コロナ借換保証では返済能力が担保されている企業かどうか入念に審査し、経営行動計画書からその実現性を厳正に確認しています。

借換実行のタイミングはいつが最適か?

借換を実行するタイミングですが、下記の2つの要素から判断すると良いでしょう。

元本返済開始時期に合わせる

借換の大きな目的は、元本返済の開始による負担の軽減にありますので、返済開始時期に合わせて実行し 据置期間を延長する使い方が想定されます。特に返済負担が資金繰りに与える影響が大きい企業の場合は、融資の条件以上に返済を遅らせる事を優先すべきです。

売上が減少している時期に借換を実行する

セーフティネットの認定が出た場合、保証料を低く抑えることができるので条件面は魅力的になります。注意が必要なのはセーフティネット認定書の有効期限が30日であり、保証協会への申込の結果発行される信用保証書の有効期限も30日ですので、認定書発行から融資実行までの猶予期間は長くても2か月程度発生するという点です。

コロナ融資の元本返済開始とタイミングが一致すれば理想的ですが、据置期間を残しての借換になったり、反対に、返済が開始されてからの借換となる可能性もあります。会社の状況から資金負担と条件面のどちらを優先すべきか考えておく必要があります。

まとめ

コロナ借換保証はあくまでも会社が平常時まで回復し、資金不安が解消されるまでの時間的猶予を作るためのものです。延長した据置期間で経営行動計画書に沿った行動が求められてきます。
伴走支援が要件になっている点は正しい資金活用の啓発とも捉えることができます。金融機関と2人3脚で関わりが持てる機会は貴重ですので、これを機に相互理解を深めると長期的な資金調達力の向上にも繋がっていくのではないでしょうか。

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