本記事では、作業効率を上げ、スムーズに仕事を行うための快眠法を具体的に解説します。
作業効率と睡眠
睡眠が作業効率に与える影響については、従来より様々な研究が行われています。62,000人以上を対象にしたMarco Hafner et al.(2016)の研究によると、睡眠不足が労働生産性を低下させることが明らかになっています。睡眠と業務効率は切っても切れない関係にあり、効率よく作業を進め、スムーズに仕事を行うためには、良質な睡眠を確保することが非常に重要です。
在宅ワーク下での睡眠状況
新型コロナウイルスの影響下で、働き方に大きな変化が生まれました。在宅で仕事をする機会が増えた人は多いのではないでしょうか。在宅ワークは、通勤時間の削減、リラックスしながら仕事に取り組めるなど利点を持つ一方で、様々なマイナス面も持ち合わせています。
特に在宅ワークは、睡眠環境にマイナスの影響を与えることがわかっています。
例えば、在宅ワークによって外に出ることが少なくなり、太陽に当たる時間が減ることで、体内リズムの乱れが生じやすくなります。 また、自宅が仕事場となることによって、オンとオフの切り替えが難しくなり、就寝時にうまく寝付けなくなってしまうような事例も挙げられます。
快眠法解説
1. 朝、日光を浴びる
起床してすぐに日光を浴びる事は、体内リズムを正常に保つために非常に重要です。光を浴びることによって、脳が覚醒し、体を活動モードへと切り替えます。それによって作業効率が上がるだけでなく、夜になると体をリラックスモードへと切り替え、スムーズに入眠できる効果もあります。
2. 昼間に適度な仮眠をとる
昼間に適度な仮眠をとることは、脳のパフォーマンスを向上させる効果があります。効果的な仮眠のポイントはいくつかあります。
まず、仮眠は昼間の時間帯に15分から20分ほどの長さでとることが大切です。夕方以降は、夜間の睡眠に影響を与えてしまうため、遅くとも16時までにとりましょう。
また、仮眠をとる場所は、夜間睡眠をとっているベッドや布団以外にすることが大切です。夜睡眠をとる場所と同じ場所で眠ってしまうと、身体が本格的な睡眠モードへと移ってしまい、短い仮眠を取ることが難しくなってしまいます。机に伏せたり、椅子やソファーなどに腰掛けたりして仮眠をとりましょう。
仮眠の前にカフェインを含む飲料を摂取することも、仮眠後にスムーズに目覚めるためにおすすめです。
3. カフェインの摂取時間に気をつける
カフェインは体を覚醒させ、睡眠の妨げになることがわかっています。就寝の6時間前からはカフェインを含む飲料の摂取を控えましょう。
カフェインを含む飲料としては、コーヒー、紅茶、ウーロン茶、ほうじ茶、マテ茶、コーラ、エナジードリンクなどが挙げられます。就寝前は、カフェインを含まない飲み物へと切り替えましょう。
カフェインを含まない飲み物としては、麦茶、ルイボスティー、ハーブティー、ハト麦茶などが挙げられます。最近ではコーヒーや紅茶にもカフェインレスのものが販売されています。
また、夜間の水分不足は、睡眠の質を下げてしまいます。睡眠前にコップ一杯程度の水分を摂ることも大切です。
基本的に就寝前にカフェインはとってはいけないのですが、緑茶はテアニンという物質を含んでおり、入眠をスムーズにする効果も併せ持っています。睡眠の約2時間前に、低めの温度で抽出した緑茶を飲むことで、リラックス効果が高まり睡眠の質を改善する効果がわかっています。
おすすめなのが水出しの緑茶です。作り方はとても簡単で、冷たい水に緑茶の茶葉を入れ、数時間置いておくだけで完成です。最近は、ペットボトルに入れるだけで簡単に水出しの緑茶を作ることができるティーバッグタイプの商品も販売されているため、ぜひ取り入れてみてください。ただし玉露入りの緑茶はカフェイン含有量が多いため避けてください。
4. 作業をする場所に気をつける
在宅ワーク下で、注意したいポイントとして、なるべく寝室で仕事をしないことが挙げられます。これは脳の認知が関わってくる内容で、人間は適度な緊張感を持って作業に取り組む環境と、リラックスして休息を取る環境を、場所ごとに認識する傾向があります。そのため寝室で作業をしてしまうと、寝室を眠る場所ではなく集中して仕事をする場所と認識してしまい、夜間スムーズに寝付くことが難しくなってしまいます。
理想的には、寝室では仕事をしないことが最も良いのですが、難しい場合はベッドや布団の上に座ったり寝転んだりして仕事をすることだけは避けましょう。
5. 入浴について
適度な入浴は、質の良い睡眠をとる上で効果的です。就寝する約2時間前に、38度程度のぬるめのお湯にゆったりとつかりましょう。熱めのお湯に入ってしまうと、体が覚醒モードへと切り替わってしまうため注意してください。
熱いお風呂や、熱いシャワーは、朝目を覚ますのに適しています。夜はぬるめのお湯にゆったりと、朝は熱いシャワーをさっと浴びることが理想的です。
6. 就寝前の光環境に気をつける
光環境は、覚醒度や体内リズムに大きな影響与えます。寝る1時間前は、できれば部屋の照明は暗くすることが理想的です。寒色の照明は覚醒を促してしまうため、暖色の照明に切り替えましょう。
また、スマートフォンから受けるブルーライトも覚醒を上げてしまい、睡眠に影響を与えます。睡眠の2時間前以降は、なるべく使用しないようにしましょう。難しい場合は、ブルーライトカットアプリも効果的です。
7. 就寝時は靴下を脱ぐ
眠っている間、体の体温は大きく変化しています。睡眠が深くなるほど、体の体温は低下します。体温の変化は、体から熱が放熱されることによって起こります。睡眠中に靴下を履いてしまうと、放熱がうまくいかず、睡眠を妨げてしまうことも少なくありません。眠るときには必ず靴下は脱ぎましょう。
8.「入眠儀式」を持つ
入眠儀式とは、就寝前に行う行為のことです。行う内容としては、覚醒度を上げてしまう運動や、興奮作用があるようなもの以外であれば基本的には自由です。
例えば、ストレッチをする、お気に入りの本を読む、ハーブティーを飲むなど、就寝前にルーティンとして同じ行動をとることで、脳がこれから眠ると言うことを認知しやすくなり、スムーズに寝付く事が可能になります。
アロマオイルや香水などで、眠る前に特定の香りをかぐことも効果的です。おすすめの香りとしては、リラックスしやすいラベンダー、カモミールなどが挙げられます。
9. 寝付けないときの対処
ベッドに入ったものの、どうしても寝付けない場合は、無理に寝ようとせず、一旦ベッドから出ることが大切です。無理に眠ろうとしてしまうと、体がストレスを感じてしまい覚醒度が上がってしまいます。寝付けない場合は、一旦ベッドから出て、本を読んだり、お気に入りの音楽を聴いたり、ハーブティーを飲むなどリラックスすることが大切です。
まとめ
良質な睡眠をとる事は、作業効率を上げ、スムーズに仕事を行う上で非常に大切です。日常の中で、今回ご紹介した快眠法を取り入れることで、質の良い睡眠をとることができ、業務効率も向上する効果が見込めます。
参考文献
・Hafner, Marco., Martin Stepanek, Jirka Taylor, Wendy M. Troxel, and Christian van Stolk (2016) “Why Sleep Matters-The Economic Costs of Insufficient Sleep,” RAND EUROPE .
・宮崎総一郎・林 光緒(編)『改訂版 睡眠と健康』 放送大学教育振興会