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何から始める?悩める経理に捧ぐ財務・会計DXの道標

大企業では抜本的なDXが進んでいますが、中小企業においてもそれは例外ではありません。中でも財務・会計分野はDXの余地が大きく、企業ごとにさまざまな課題が山積の状況です。

財務・会計分野のDXを実現することで専門家がいなくとも高度なデータ分析を実現し、売上高増加率や労働生産性などのデータを自動で算出することも可能です。各種業務をデジタル化することで、現場業務の効率化や、作業の自動化による負担軽減、またはそれに伴う働き方改革の推進なども進みます。

一方でDX実現に当たっては、設定すべきビジョンが不明瞭であったり、社内での同意や情報共有が不十分であること、あるいはリソースが不足していたりと、さまざまな課題を乗り越える必要もあるでしょう。この記事では、中小企業が財務・会計DXを推進する上で知っておきたい、実践すべきDXやその進め方について解説します。

目次

そもそもDXとは?

DXはDigital Transformationの略称で、デジタル技術を使った事業変革などの取り組みを指す言葉です。
正確にはDXには以下の3つの分類に分けられます。

・デジタイゼーション(Digitization)
アナログ・物理データのデジタルデータ化

・デジタライゼーション(Digitalization)
個別の業務・製造プロセスのデジタル化

・デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)
組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革

DXレポート2 中間取りまとめ(概要)|経済産業省

本記事では上記の概念をすべて含んだものをDXとして解説いたします。具体的には紙を使った帳簿管理をペーパーレスに置き換えることや、AIを使った業務の自動化などが挙げられます。企業の経営課題や予算に応じて多様な選択肢を取捨選択し、さらなる生産性や成長の機会獲得を進めることが、DXにおいて最も大切な考え方です。

財務・会計業務にDXが求められている背景

DXの適用領域は広く、あらゆる業務においてDXが必要とされています。当然、財務・会計業務も例外ではありません。税務・会計業務にDXが求められている理由としては、以下の3つが挙げられます。

人材不足の深刻化

1つは、企業の人材不足が一向に改善の兆しを見せないことです。帝国データバンクが2022年9月に発表した調査によると、企業全体の50%以上が人材不足を感じており、旅行・宿泊業界においては60%を上回るなど、多くの組織が既存のシステムでは対応が難しい状況が続いています。

財務や会計は重要な業務ではあるものの、直接売上に貢献するわけではありません。そのため、できる限り効率化を推進することでコア業務に人員を集中させ、人材不足を解消する取り組みが求められます。

「2025年の崖」の到来

経済産業省は2019年に発表したレポートの中で「2025年の崖」という言葉を用い、関係者の間で話題となりました。「2025年の崖」とは、日本企業の間でDXが進まないことを危惧した表現で、当時のままDXが停滞した状況が続いた場合、2025年には最大、年間12兆円もの経済損失が発生することを比喩したものです。

ビジネスのグローバル化が進み、海外企業では盛んにDXが進む中、日本企業ではDXが進まないことで、大きな格差が広がっていくことが懸念されます。アナログ業務の継続や老朽化したシステムの運用は企業に余計なコストをもたらし、ますます競争力を失ってしまう結果を招くと考えられているのが現状です。

働き方の多様化

働き方の多様化が進み、フレックス制度の導入やリモートワークの推進は大手企業を中心に実施されていますが、これらの取り組みを進める上でもDXは不可欠です。クラウドシステムを導入して遠隔でも業務を遂行できたり、勤怠管理を正確に行えるアプリの導入で、柔軟な出退勤が可能になったりすることが求められるためです。

多様な働き方を認めることは、優秀な人材を社内に留め、外部から招く上では欠かせない要素となりました。人材不足が加速する中では、こういった社員の自由を担保する施策の実現も必要です。

財務・会計分野で実現すべきDXとは

財務・会計分野において達成すべきDXには、主に以下のような取り組みが挙げられます。

経理業務のペーパーレス化

例えば経理業務のペーパーレス化は、代表的かつ取り組みやすいDXと言えます。経費の申請などをデジタルで行えるようになれば、わざわざ対面で精算を行う必要がなくなるでしょう。

クラウド会計ソフト活用などによる業務効率化

クラウド会計ソフトを使って、どこからでも会計業務に取り組める環境づくりも必要です。会社のPCにインストールせずとも使えるクラウドソフトであれば、リモートからでも会社のデータベースにアクセスし、業務を遂行できます。

システム・データ連携

従業員のデータベースと紐付けて、余計なデータ入力や転記作業を効率化することは基本的なDX施策の一つです。勤怠情報と従業員情報の連携などを行うことで、交通費の精算やその他の経費精算、給与計算、給与明細発行など、一つのデータベースを使ってまとめて実行できます。

DX化の道筋

上記のような具体的な施策を実行するためには、以下のステップでDXを推進することが必要です。

1.課題や問題点の洗い出し

まず必要なのは、現在地の確認です。自社にどのような課題や問題点が存在しているのかを明らかにすることで、初めて具体的な施策へと落とし込むことができます。特に中小企業においては日々の業務を進めることに邁進してしまい、中長期的なビジョンを描くのが後手に回りがちです。目先での改善だけにとらわれず、経営層と現場が根本的な課題・問題点を洗い出していくことがまずは必要です。

2.業務のデジタル化~自動化

優先的に取り組むべき課題としては、アナログ業務のデジタル化が挙げられます。DXの要は業務の完全なデジタル化であるため、紙媒体や対面に依存している業務は、なるべく早期に解消することが求められます。全業務のデジタル化を実現することで、さらなるデジタル活用や業務改善の道筋を探ることが可能です。

3.現場業務の自動化

ただ業務をデジタル化するだけではなく、可能であれば業務の自動化を達成するためのアプローチについても検討してみましょう。例えばRPAの導入は、PDFや画像データから文字データを自動で抽出し、データの入力を自動化したりすることができます。会計業務においては、紙で発行されたレシートや明細書をデジタル化する作業が発生しやすいものです。このような業務が多々発生する現場においては、自動化による恩恵は無視できないものとなるでしょう。

4.ボトルネック特定および改善活動

DXはただデジタル技術を取り入れるだけで実現できるものではなく、繰り返し改善を行うことで、大きな効果をもたらすことができる取り組みです。DX施策を実際に運用してからは、効果測定を行うことでボトルネックを特定することも必要です。DX施策の導入を妨げているもの、あるいは施策が効果を発揮することを妨げている要因を特定し、解決するための改善活動を進めましょう。

DX化推進において想定される課題

DXの推進を妨げる課題としては、以下の4つが主に懸念されます。自社でどのような課題を抱えているのかを検討する際の、参考にしましょう。

システム導入による初期費用・ランニングコスト

DXを妨げる大きな要因の一つが、費用の問題です。システム導入に伴う費用はもちろん、それを維持管理し活用するためのランニングコストも、あらかじめ検討しておく必要があるでしょう。

DXの推進担当のリソース確保

DXは導入から定着に至るまでに、人的リソースが必要となります。また、DXを推進することは難易度の高いミッションです。社内でもIT技術に明るい人材を担当に任命することが重要です。そして、担当者がDX推進に専念できるように、既存業務の負担を軽減する取り組みを行う必要があるでしょう。

現行の業務プロセスとの整合性

DXの結果、現行の業務フローと大きな乖離が発生する場合、新体制への移行には相応の時間がかかります。既存の業務プロセスを可能な限り維持することで、速やかなデジタル環境への移行を実現できるため、ある程度整合性を担保できるアプローチの検討が必要です。

また、DXが進むことは、業務をデジタル化して利便性を提供してくれる一方、サイバーセキュリティの問題が新たに登場します。DXはただデジタル化を推進するだけでなく、安全にデジタル技術を使える環境を整備する必要があります。

システムの使い方や運用方法についての教育

中小企業の場合、IT技術を活用できる人材が社内にいないといった課題が散見されます。そのため、新しいシステム運用に慣れるために、研修・教育のための時間を十分に確保する必要があります。システムベンダーから研修を受けられるプランもあるため、自社のITスキルを踏まえた上で、適切なデジタル化とデジタル化に向けた教育を進めましょう。

まとめ

この記事では、財務・会計分野におけるDX推進の際、検討しておきたいポイントについて紹介しました。DXが指す領域は広く、会計分野においてもさまざまな課題解決に適用することができます。まずは自社でどのような点に課題を抱えているのかを把握し、課題解決に最適な手段を検討することが大切です。

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