企業の永続的な成長にとって欠かせない経営分析。経営分析では、分析に役立つ正確なデータを集めて管理することが重要です。しかし、これらの業務には人手や時間が必要になるため、現場の作業を効率化する施策が欠かせません。今回は、経営分析にツールを導入するメリットを解説したうえで、おすすめの分析ツールを紹介します。
経営分析の重要性
経営分析とは、経営に影響をあたえるデータを管理・分析する業務を指します。経営分析の目的は、自社の現状や問題点を把握すること、そのうえで成長につながるような経営戦略を策定することです。
賃借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を参考にしたり、市場のトレンドやシェア率、競合他社の動向などをまとめた外部資料を活用したりすることで、適切な経営戦略の策定に結びつけます。経営分析を行うことで、自社の経営基盤を強固なものにできるのです。
しかし、適切な経営分析を行うには、一定のコストが発生します。異なる部門間に散在するデータを統合するほか、正確なデータ入力を実現する仕組みを構築する必要もあるからです。これらの業務には、作業にあたる人員や管理者の存在が欠かせません。こうした課題を解決するのに役立つ方法が、分析ツールの導入です。
経営分析にツールを導入する3つのメリット
経営分析にツールを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的なメリットを3つ解説します。
部門横断でデータを集積して分析・管理できる
1つ目のメリットが、企業が管理しているデータを集積して分析できるようになる点です。
分析ツールには、企業の基幹システムと連携して過去のデータをインプットする機能が備わっています。分析ツールの導入によって、営業部門とマーケティング部門などの異なる部門で管理していたデータを一元管理できるようになります。Excelやテキストファイルに対応したツールを選べば、Excelやテキストファイルに記録していたデータを1つのプラットフォーム上で管理することが可能です。
分析結果を可視化できる
データをグラフや表に加工できる点も大きなメリットです。経営分析は、経営者会議で検討されるため、提出資料は可能な限りわかりやすい内容に仕上げなければなりません。
そこで、分析ツールを活用すると、集めたデータを数値の羅列ではなくグラフや表といった視認性の高いものに加工できます。経営陣の判断を助けるような資料作成に役立ちます。
人為的ミスを減らせる
3つ目のメリットが、人為的ミスを減らせることです。データを集めても、データの種目や数値が間違っていては、正確な分析につながりません。適切な経営計画の策定には、正しいデータで入力されていることが重要です。
Excelのような手動で入力するツールの場合、データの誤入力が発生するおそれがある一方、分析ツールは日々の記録（データ）を自動で集積してくれるため、人為的ミスが起こりにくく少ない労力でデータを管理できます。
おすすめの経営分析ツール4選
経営分析に役立つツールを4つ紹介します。ツールの概要や提供タイプなどを確認して、自社にあったツールを探してみましょう。
SAP Analytics Cloud
SAP Analytics Cloudは、SAP社が提供している経営分析ツールです。自社のデータベースへアクセスして、これまでのデータを一元化してくれるほか、集積したデータを可視化するさまざまな機能を備えており、企業の意思決定をサポートしてくれます。機械学習による予測・影響分析機能も、SAP Analytics Cloudの大きな特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供タイプ | クラウド型 |
| 参考価格 | 要問い合わせ |
| 無料トライアル | 最大60日間の無料トライアルあり |
MotionBoard
MotionBoardは、ウイングアーク1st 株式会社が提供している経営分析ツールです。集積したデータをチャート化したりグラフに置き換えたりする機能が備わっており、経営分析に役立つデータを可視化できます。MotionBoardには、クラウド型とオンプレミス型の2種類の提供形態があり、どちらも顧客管理ツールである「Salesforce」と連携できる点も魅力の1つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供タイプ | クラウド型/オンプレミス型 |
| 参考価格 | クラウド型 月額1,500円から/1ユーザー オンプレミス型 月額6万500円/ライセンス |
| 無料トライアル | あり |
Manageboard
Manageboardは、株式会社ナレッジラボが提供している経営分析ツールです。カスタムレポートの作成機能では、部門別業績管理表や着地予測を数分で作成してもらえるため、資料作成に要する時間を短縮できます。余った時間を別の業務に充てることができるでしょう。
権限調整機能によって、社員ごとにアクセスできる情報を設定することも可能です。経営状態を社員と共有したり経営の透明性を確保したりするのに役立つでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供タイプ | クラウド型 |
| 参考価格 | 要問い合わせ |
| 無料トライアル | あり：Web面談（60分）によるデモ利用あり |
FineReport
FineReportは、帆軟 （Fanruan）ソフトウェア株式会社が提供する経営分析ツールです。日本ではバリュ―テクノロジー株式会社が代理店をつとめています。既存のデータベースと連携する機能が備わっており、Excel、CSVなどのデータをFineReport上にまとめられます。ドラッグアンドドロップといった操作で直感的に操作できる点も大きな特徴です。
データの集計や計算、フィルタリング機能を活用すると、経営分析に役立つデータを知りたい項目に分けて抽出・分析できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供タイプ | オンプレミス型 |
| 参考価格 | 要問い合わせ |
| 無料トライアル | あり：90日間の無料トライアルあり |
経営分析にツールを導入する際の注意点
経営分析にツールを導入する際の注意点を3つ解説します。
導入コストと運用コストを確認する
分析ツールの費用対効果を高めるために、導入コストと運用コストに注意しましょう。分析ツールは、提供形態やライセンスの内容によって異なる料金プランが設定されています。例えば、オンプレミス型の分析ツールを導入する場合は、クラウド型よりも初期費用が高額になりますのでご注意ください。一方のクラウド型の場合は、初期費用を抑えられるものの毎月のランニングコストが発生します。
| 提供タイプ | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| オンプレミス型 | 自社の運用体制にあわせてカスタマイズできる | 初期費用が高額になりがち サーバーの保守管理費用が発生する |
| クラウド型 | 契約してすぐ運用開始可能 | 毎月発生するランニングコストがオンプレミス型よりも高くなる |
また、ユーザーライセンス型の分析ツールを導入すると、利用するユーザー数によって費用が異なり、利用人数が多いほど費用がプラスされていきます。サーバーライセンス型の場合は、サーバー数に応じて費用が異なります。
ツールを使いこなすための人的コストにも注意しましょう。運用する社員を採用したり自社で新たに育成したりする際に一定のコストが発生します。ツールを導入する際は、こうした費用を必ず確認して、予期しない費用の発生に気を付けましょう。
自社の課題を明確にして適切なツールを選ぶ
分析ツールの費用対効果を高めるためには、企業課題を明確にすることも重要です。分析ツールは、あくまで経営陣の意思決定の精度や速度を高めるためのツールになります。コスト削減、人材育成、生産性、成長性の分析などの経営課題の中から自社の課題を見極めて、適切な分析ツールを導入しましょう。
小規模で導入する
分析ツールを導入する際は、規模の小さい部門に導入したりテストチームを組んで試験運用したりと、小規模の導入からはじめましょう。特にツール運用のノウハウが自社に育っていない場合は要注意です。全社的規模で導入して、万が一ツールの定着に失敗した場合は、まとまった規模の損害が発生するかもしれません。
分析ツールを効果的に運用できるまでには、一定の人手と手間が発生します。分析ツールの導入がはじめての場合は、スモールスタートを心がけて、徐々にツールの運用に慣れていきましょう。
まとめ
企業分析を効率化することで、企業価値を向上させる経営計画を策定するためには、経営分析が重要です。そして、経営分析にかかる煩雑な業務を効率化してくれるのが分析ツールになります。
分析ツールの導入メリットは、自社のデータベースに散在するデータを一元管理して分析できることや集積したデータを可視化して経営判断に役立てられること。分析ツールの導入によって、人力だけに頼らない正確性の高いデータ入力も可能となります。自社に適切な経営分析を策定するために、分析ツールの導入を検討してみてください。
