決められた期間内に目標を達成することが求められる「プロジェクト」。プロジェクトを成功に導くためには、スケジュールや進捗状況を緻密に管理することが重要です。プロジェクトマネジメントはプロジェクトを成功に導く手法であるため、現代のビジネスマンに必須のスキルといえます。
それでは、プロジェクトマネジメントでは、どのような考え方が基本となるのでしょうか。また、どのようなフレームワークが効果的なのでしょうか。
今回は、プロジェクトマネジメントの基本の考え方とフレームワーク、プロジェクトマネジメントを成功に導く3つのスキルを紹介します。
プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの成功を目的として、人手、予算、スケジュールなどを調整する手法や考え方のことです。
プロジェクトを成功に導くには、業務を効率的にまわして一定期間内に目標を達成しなくてはいけません。そのため、企業が持つ資産(ヒト、モノ、カネ)をどのように運用するのかが鍵を握ります。
プロジェクトマネジメントを活用すると、「いつまでに、何を、誰が、どこまで行うか」を管理できるようになります。目標達成(ゴール)から逆算して計画を立てる方法も有効です。プロジェクトマネジメントは、プロジェクトの進捗状況や問題解決に役立つため成功確率を高められるのです。
なお、プロジェクトと似た意味の言葉にタスクがあります。下記の表で両者の違いをチェックしておきましょう。
<プロジェクトとタスクの違い>
プロジェクト(計画) | タスク(課題) |
企業が達成したいビジネス上の目的。または目的を達成するための計画のこと | プロジェクトを達成するために必要な仕事や作業のこと |
プロジェクトマネジメントがビジネスマンに役立つ理由
プロジェクトマネジメントを身につけることで、自社のプロジェクトを成功させるための知識や技術が身につきます。だからこそ現代のビジネスマンに必須のスキルといえるのです。
例えば、プロジェクトマネージャーやPMOがプロジェクトマネジメントを身につけることで、プロジェクトの進行に一貫性を持たせたり問題を早期発見したりする方法が身につきます。納期に間に合うよう業務を進められるでしょう。
マネジメントと聞くと、チームの上長といった方だけに必要なスキルと考えるかもしれません。しかし、チームメンバーが身につけても効果的です。プロジェクトマネジメントを身につけることでQCDを高められます。QCDとは、プロジェクトの進行に重要な以下の3つの要素であり、顧客の満足を満たすために必要不可欠な要素です。3つの要素の意味を押さえておきましょう。
- Quality(クオリティ=品質)
- Cost(コスト=費用)
- Delivery(デリバリー=納期、締切)
プロジェクトチーム全体でQCDを高められれば、顧客が満足するような成果につながります。
プロジェクトマネジメントのフレームワーク5選
フレームワークとは問題解決や計画立案に役立つ考え方のこと。プロジェクトマネジメントに効果的な5つのフレームワークを確認しましょう。
PMBOK(ピンボック)
PMBOK(ピンボック)とは、プロジェクトマネジメントに関する知識が体系的にまとめられたものです。アメリカの非営利団体によって作成され、現在は第7版まで発行されています。
PMBOKでは、効率的にQCD(品質、費用、納期)を管理するために必要な情報がまとめられています。PMBOKを活用すればQCDの向上を実現できるでしょう。
PMBOKは実用性を重視したものであるため、時代の流れに応じて修正や加筆が行われてきました。第7版では「8のパフォーマンス領域」や「12の原理・原則」という考え方が新たに提示されました。過去のPMBOKの情報とあわせて最新版の情報をチェックするようにしましょう。
CCPM
CCPMは、締切の遵守を主な目的とするフレームワークです。目標達成に必要なタスクに、最低限度の時間を設定することで、プロジェクト全体に時間的余裕(プロジェクト・バッファ)を生み出します。
バッファとは時間的余裕のこと。CCPMでは、各タスクにバッファを設定しない代わりに全体に時間的余裕を設定することで、問題発生時に余裕のある対処を実現できるのです。
ただし、タスク数が少ない短期プロジェクトでは、バッファを確保するのが困難なため不向きとなります。CCPMを活用する際はご注意ください。
P2M
P2Mとは、プログラム&プロジェクトマネジメントの略称で、複数のプロジェクトを統括して管理するためのフレームワークです。先ほどのPMBOKに「プログラムマネジメント」を加えた考え方となっています。複数のプロジェクトや大規模なプロジェクトのマネジメントに効果的です。
PPM
PPMとは、プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの略称。企業の戦略や目標にあわせて、統合したプロジェクトを評価したり優先順をつけたりして管理するフレームワークです。
プロジェクト単体の成功を目指すというよりも、企業自体の目的や理念、戦略を考えた上で、どのプロジェクトに人的リソースや資産を投下するのかを決定できるフレームワークです。
PPMを活用すると、成功を期待できるプロジェクトに資本を集中投下できるようになるため、成功確率の向上が期待できます。経営リスクを最小限に抑えられるでしょう。
Lean
Lean(リーン)とは、プロジェクトにおける無駄を最小限に抑えながら、顧客満足度の最大化を目的としたフレームワークです。Leanでは、以下のプロセスを繰り返すことで、より企業にあったプロジェクトマネジメントの実現を目指します。
- 顧客価値の特定
- 無駄の削除
- 理想のワークフローの作成
- ワークフローの実施
- 評価・改善
プロセスの改善に優先的に取り組みたい場合はLeanの活用がおすすめです。
プロジェクトマネジメントを成功に導く3つのスキル
プロジェクトマネジメントの成功のために、最低限身につけておきたい3つのスキルを解説します。
1.タイムマネジメント能力
タイムマネジメント能力は、プロジェクトの生産性を高めるために、時間を効率的に管理するスキルのことです。プロジェクトマネージャーだけでなくチームメンバーの業務効率改善にも役立ちます。
くり返しになりますが、プロジェクトを成功させるには期間内に目標を達成しなくてはいけません。そこで問題となるのが、全体の進行に影響が出るタスクの発生です。1つのタスクの遅れが全体の遅延につながらないように、優先順位の高いタスクから取り組んで全体の遅延を防ぐ必要があります。
タイムマネジメントでは、以下の工程を用いることでプロジェクトの生産性を高めます。
- 目標達成に必要なタスクを可視化する
- 優先順位をつける
- タスクを割り振る
- 実行後振り返りを入れる
時間に余裕を持って計画を立てることも重要ですが、業務の生産性を高めるために、各チームメンバーの得意分野にあわせたタスクを割り振るとよいでしょう。
2.コミュニケーション能力
プロジェクトを成功に導くためには、コミュニケーション能力も求められます。コミュニケーション能力は、プロジェクトマネージャーとチームメンバーの双方が身につけるべきスキルです。
例えば、プロジェクトマネージャーの場合、メンバー間で認識にズレが生じないように、チームメンバーと適度にコミュニケーションをとることが求められます。コミュニケーションを通じて、現在の進行状況が最終的な目標達成に向かっているかどうかをチェックすることも大切です。
チームメンバーであれば、自分のタスクを完了できるように、あるいは問題が起きた場合に必要な情報共有が行えるように、チームメンバーやプロジェクトマネージャーの方とコミュニケーションしなくてはいけません。
プロジェクトチーム内のコミュニケーションが円滑であれば、問題が起きても適切に対応ができたりチームの士気があがったりします。最終的な目標達成に向かってチームメンバーが連携できるように、コミュニケーション能力を身につけましょう。
3.問題対応力
問題対応力とは、プロジェクトに問題が発生した場合に適切に対処するための能力のことです。問題が発生しても、原因を特定して必要な対処を実施できれば、プロジェクトの成功確率は高まっていきます。また、問題を事前にシミュレーションしておくのもよいでしょう。事前予測を立てておくことで、問題が起きても、慌てずに対処できるようになります。
問題に適切に対応することで、品質の低下や締切超過の確率を大幅に低減できます。結果的に、顧客満足度を高められるのです。
まとめ
企業が持つ資産(ヒト、モノ、カネ)には限りがあります。プロジェクトマネジメントは、そうした資産を有効活用して、企業活動の成果を最大化するのに役立ちます。
現代のビジネスマンがプロジェクトマネジメントを身につけることで、プロジェクトの成功確率が大幅に向上するかもしれません。社内や社外からの高評価にもつながるでしょう。
なお、効率的にプロジェクトマネジメントを実行するためには、本記事で紹介したフレームワークが有効です。タイムマネジメント能力やコミュニケーション能力などのスキルにも配慮してみてください。
プロジェクトマネジメントを自社の現場に導入して企業の生産性を高めていきましょう。