「補助金に興味はあるが、申請が難しそう」「中小企業向けの補助金にはどういうものがあるのか知りたい」と会社経営に携わる方であれば、一度は考えたことがあるでしょう。この記事では、中小企業におすすめの補助金から、申請時の注意点、申請スケジュールまで解説いたします。
中小企業におすすめの補助金
中小企業向けの補助金は数多く存在しています。今回は中でも補助上限額が高いもしくは小規模事業者でも活用しやすい以下の3つの補助金をご紹介します。なお、補助金額は補助金の種類や、企業規模に応じて変わります。
- 事業再構築補助金
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金
事業再構築補助金
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化したことで既存事業が苦戦している中小企業向けに新分野展開、業態転換などを促すことを目的に創設された補助金です。事業再構築補助金は「通常枠」、「大規模賃金引上枠」、「回復・再生応援枠」、「最低賃金枠」、「グリーン成長枠」、「原油価格・物価高騰等緊急対策枠」と6つの事業類型が存在しますが、本記事では「通常枠」についてご紹介します。
補助対象要件
事業再構築補助金は新型コロナウイルス感染症によって、事業に影響を受けた企業を対象としているため売上の減少が要件に含まれていることが特徴です。
要件一覧
①事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること。
②2020 年4 月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019 年又は 2020 年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して 10%以上減少していること。
③事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。
補助対象経費
以下の経費が補助対象経費となります。「建物費」が事業再構築補助金にはあるため、事業計画の実施に不可欠と認められる必要はありますが、建物の建設・改修、建物の撤去、原状回復、一時移転費用の資金に充てられることが大きな特徴です。
対象経費一覧
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費
補助金額・補助率など
従業員数および企業規模によって補助金額上限・補助率が決定されます。通常枠でも8,000万円と補助金額上限が高いことが特徴です。活用方法としては大きな特徴といえる「建物の建設・改修、撤去、原状回復、一時移転に要する費用」に使用するのが有利です。例えば、介護施設を建設する法人がある場合、ZEH支援事業の補助金申請と事業再構築補助金の組み合わせで、より多くの資金調達をすることも可能です。
補助金額
・従業員数 20 人以下: 100 万円 ~ 2,000 万円
・従業員数 21~50 人:100 万円 ~ 4,000 万円
・従業員数 51~100 人: 100 万円 ~ 6,000 万円
・従業員数 101 人以上 :100 万円 ~ 8,000 万円
補助率
・中小企業者等: 2/3 (対象補助金額が6,000 万円を上回る場合は 1/2)
・中堅企業等:1/2 (対象補助金額が4,000 万円を上回る場合は 1/3)
スケジュール
公募開始:令和5年3月30日(木)
申請受付:調整中
応募締切:令和5年6月30日(金)18:00
参照サイト:中小企業庁 事業再構築補助金
※2023年4月18日時点
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、「中小企業の働き方改革、賃上げ、インボイス導入などの制度改変に対し、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を通じ、生産性を向上させること」を目的として設立されました。革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援する事業です。
従って、事業再構築補助金の様な売上減少などの補助要件は課されません。また名称から製造業向けの補助金と思われがちですが、幅広い業種が対象となる補助金です。「通常枠」、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」、「デジタル枠」、「グリーン枠」及び「グローバル市場開拓枠」と複数の事業類型が存在しますが、本記事では「通常枠」についてご紹介します。
補助対象要件
主に賃上げ関連の目標を満たす3~5年の事業計画の策定が求められることが大きな特徴です。また、この後に紹介する補助対象経費のうち、機械装置・システム構築費における単価50万円以上の設備投資が必須となります。
交付後に事業計画を策定していないことが発覚した場合や、目標が未達だった場合には補助金額の返還を求められるので注意が必要です。
事業計画に求められる要件
・給与支給総額が年率平均1.5%以上増加していること
・事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とすること
・事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加すること
その他の要件一覧
・事業の実施場所(工場や店舗等)をすでに有していること。※建設中のものなどは対象外
・交付決定日から10ヶ月以内(ただし、採択発表日から12ヶ月後の日まで)に発注・納入・検収・支払等の全ての事業の手続きが完了する事業であること
補助対象経費
以下の経費が補助対象経費となります。
対象経費一覧
以下経費が補助対象となります。なお、工業会の証明書があれば最新設備の購入が可能です。また、経営力向上計画(国税の税制優遇)と、先端設備等導入計画(3年間の償却資産税の減免)を利用することで、益金に計上する補助金の税金対策ができることも特徴です。
機械装置・システム構築費※、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
※機械設備・システム構築費に関しては設備単価50万円以上の設備投資が必須
補助金額・補助率など
補助金額
・従業員数 5人以下 :100万円~750万円
・従業員数 6人~20人:100万円~1,000万円
・従業員数 21人以上 :100万円~1,250万円
補助率
・中小企業者: 1/2
・小規模企業者・小規模事業者・再生事業者:2/3
※ 上記の中小企業者および小規模企業者・小規模事業者などの区分は、こちらをご覧ください。
※「回復型賃上げ・雇用拡大枠」、「デジタル枠」、「グリーン枠」及び「グローバル市場開拓枠」での申請の場合、基本要件に加えた追加要件が課されますが、補助金額の上限増加に加え、補助率が2/3に上がります。
スケジュール
第14次は2023年4月19日締切り、2023年6月中旬に採択発表されます。
参照サイト:ものづくり補助事業ホームページ「ものづくり補助金総合サイト」
※2023年4月18日時点
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は「小規模事業者等が取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ること」を目的として設立されました。
こちらの補助金は、事業再構築補助金やものづくり補助金とは異なり補助金額は少額ですが、小規模事業者では初めから大きな設備投資等を必要としないケースも多く、小規模事業者の業務の特性や必要性を考慮した補助金制度となっています。
「通常枠」、「賃金引上げ枠」、「卒業枠」、「後継者支援枠」、「卒業枠」、「インボイス枠」と複数の事業類型が存在しますが、本記事では「通常枠」についてご紹介します。
補助対象要件
小規模事業者向けの補助金のため、他補助金と比較すると会社規模要件が小規模である必要があるという点が特徴です。
また、商工会との連携により事業計画書を提出する必要がある点が特徴です。
事業規模
・商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) 常時使用する従業員の数 5人以下
・サービス業のうち宿泊業・娯楽業 常時使用する従業員の数 20人以下
・製造業その他 常時使用する従業員の数 20人以下
なお、持続化補助金では、同一の補助事業(取組)について、重複して国の他の補助金を受け取ることはできない点に注意が必要です。短期での集客やキャッシュフロー安定化を目的とする場合に、こちらの持続化補助金の活用を検討するのが良いでしょう。
補助対象経費
以下の経費が補助対象経費となります。広告費やウェブサイト関連費が設定されていることが特徴です。ネット販売システムの構築費や販促用のチラシ作成・送付料なども補助対象です。中小企業にとっては集客に直結した費用を申請できるため創業直後の法人にとっては活用しやすいでしょう。
対象経費一覧
機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託・外注費
補助金額・補助率など
補助金額は少額ですが、通常枠でも2/3の補助率があることが特徴です。
補助金額
・通常枠:50万円
・賃金引上げ枠 :200万円
・卒業枠:200万円
・後継者支援枠:200万円
・創業枠:200万円
・インボイス枠:100万円
補助率
2/3
※賃金引上げ枠のうち赤字事業者については3/4
スケジュール
■公募要領公開:
2023 年 3月 3日(金)
■申請受付開始:
2023 年 3月 10 日(金)
■申請受付締切:
第12回:2023年6月1日(木) 事業支援計画書(様式4)発行の受付締切:原則2023年5月25日(木)
第13回:2023年9月7日(木) 事業支援計画書(様式4)発行の受付締切:原則2023年8月31日(木)
参照サイト:小規模事業者持続化補助金サイト
※2023年4月18日時点
補助金申請時の注意点
補助金申請には注意事項があります。注意するポイントは申請時から補助金の受領後まであるため、中小企業の事業者はよく理解したうえで申請をする必要があります。
1. 採択されても自己資金が必要
採択されても、先に設備を購入し実際にかかった領収書をもって補助金は最終決定されます。タイムラグがあるため、いったん費用の全額を事業者が支払う必要があります。申請する事業者の中には「返済不要=設備投資の全額が補助される」と勘違いされている方がいます。事業再構築補助金のように、申請枠により補助上限額が異なることもあるため、十分理解する必要があります。
2. 補助対象となる経費は補助金の種類により異なる
申請する補助金の種類により、対象となる設備投資や経費の範囲は異なります。事業の内容や目的に応じて補助を受けられる設備投資や経費が異なりますので、事業の目的にあった補助金を正しく選択するようにしましょう。
3. 補助金受領までの事務手続き
これらの補助金制度では、それぞれその申請から補助金の受領まで従うべき一定の手続きがあります。申請に必要な書類を提出し審査が通った後も実績報告書の提出等が求められ審査により補助金額が確定しないと補助金の支払いが受けられません。また、申請する補助金の種類によっては認定経営革新等支援機関や金融機関、商工会・商工会議所等の支援を受けながら取り組んでゆく必要がありますのでこの点にも留意が必要です。
4. 簡単に廃止はできない
補助金受領後、事業の廃止や設備の売却および撤去をするときには注意が必要です。受け取った補助金を全額返還しなければいけない場合や、ペナルティとして利息をつけて返還しなければならないケースがあります。
補助金申請に必要な準備
ここまでおススメの補助金と申請における注意点を解説させていただきました。それではここから補助金申請にあたっての具体的な手順を解説させていただきます。補助金毎に申請方法は少しずつ異なりますので大まかな流れとして概要をつかんでいただければと思います。
事前準備「GビズIDの取得」
電子申請するためにGビズIDは必須です。申請には添付書類が必要なため、添付書類の収集と申請後受領されるまでの時間を考慮すれば、最低でも2週間ほどは必要です。補助金申請に限らず、電子化の流れにより使用できる場面が増加すると予測されるため、補助金申請の有無にかかわらず、先に取得することをおすすめします。
事業計画書の作成
事業計画書は、申請書類の中で最も時間がかかります。申請する事業者が「次年度(単年計画)」「中期計画(5カ年)」「当期の着地見込み」を作成していれば、ベースがあるため、作成時間の短縮ができます。ない場合は、はじめから作成するので時間を要します。そのほかSWOT分析を意識していない経営者の方には、初めて聞くことや見るものが多いため、作成には時間を要する部分です。
添付書類の準備
履歴事項全部証明書や、ものづくり補助金の場合は工業会からの証明書など自社で作成するものではなく、第三者機関による書類の発行が必要なものがあります。時間をかけず発行できるものもありますが、時間が必要なものもあります。有効期限を確認したうえで、早めに取得することが必要です。
電子申請入力準備
電子申請に必要な項目は決まっており、事前に必要項目が記載できる申請書のダウンロードができます。ワード形式でダウンロードできるので、事前に入力しておいてコピー&ペーストで作業を効率化できます。
まとめ
補助金は、自社の業務にマッチした種類の補助金の申請を複数組み合わせることも可能で、返済不要の資金調達ができることから、中小の事業者にとってはとても強力な事業支援となります。業務の効率化や生産性アップのために必要不可欠な設備投資のための支援も受けられることから、中小事業者はこれらの制度をぜひ活用したいところです。
一方、上述してきた通り制度を活用するためには一定の要件があり、また申請のためには事業計画書の作成など経営者が検討・準備すべき事項も多いのが現実です。効率よく申請を進めるための準備や、実施後の事業状況の報告などには専門的な知識や経験が求められますので専門家のアドバイスや実施機関との連携が必要となります。